G100/02 コボルド討伐
オイ4日目も無事に生きてましたー。
半人前の称号も貰ってきました。
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紫色の髪に、同じ色のふかふかの耳を揺らしながら、
裸足の半獣人が夕暮れの街を駆けて行く。
「ただいまぁー♪」
玄関に明かりがついているのを確認して、
オイが元気良く扉を開ける。
「おー、おかえり」
仕事用の机の前、回転椅子に座っていたサグが
振り返ってため息をつく。
「お前は、まーた怪我してきて……」
その言葉に、コボルドに切り裂かれた腕を見下ろしてオイが首を捻る。
「このくらい、舐めたら治るよ?」
「舐めるな舐めるな、今消毒してやるからこっち来い」
椅子から立ち上がり、薬棚から茶色い瓶を手に取るサグに、
オイが数歩後退りながら答える。
「やだよぅ。それ変な臭いがするんだもん……」
「ばい菌をやっつけてくれる臭いだ。我慢しろ」
適当な事を言うと、
じりじりと後退するオイの首輪をむんずと掴んで、
サグがその小さな体を軽々と引き寄せる。
傷は二箇所。どちらも軽傷といった程度だった。
顔を背けて、少しでも薬の臭いから逃れようとするオイに苦笑しながら
サグは手早く治療を済ませる。
包帯が巻かれて、臭いが薄れた途端、
オイがその大きな瞳をキラキラと輝かせながら言う。
「あのね、ボクね、はんにんまえになったんだよ!」
パタパタと落ち着き無くはねる尻尾が、その喜びを何より表現していた。
「お前が半人前なぁ……」
「すごい? すごい?」
薬瓶をしまう背中にしがみつかれて、
サグが仕方なさそうにその頭を撫で回す。
「あー、凄い凄い(1/3人前にも満たないような気がするけどなぁ)」
ぐりぐりと撫で回されていた頭をあげると、
サグの大きな手に包まるようにして、小さく首を傾げたオイが尋ねる。
「ねえ、はんにんまえって何?」
(……分からないのに浮かれてたのか)
心の中でため息をつきつつも、
サグは今夜も、いつものように根気良く、
その小さな頭と向き合うことにした。